期待以上に面白かった。流石、100分に2年もかけただけのことはある。
ある程度ストーリーはTV版を踏襲しているものの、序とは違いほぼ新作。
空から降ってきたマリがシンジに激突した後
シンジのウォークマンのトラックが「26」から「27」に進む。
「26」は旧シリーズ(全26話)のことを指していると考えられ
「27」に進むことでここからは全く新しいエヴァだということだろう。
序盤から畳み掛けるように
クオリティの高い戦闘シーンの連続。
新キャラのマリ大活躍。アスカも参戦する。
旧シリーズとの違いとしてはまず
キャラクターの性格が変わっている点があげられる。
より柔らかく、人間味が増していて
皆、それぞれ周りの人間を思いやっている。
レイはシンジとゲンドウを仲直りさせようとするし
アスカもレイとシンジに気を使って、参号機の搭乗を引き受ける。
ゲンドウも、レイの開いた食事会に行こうとしていたし。
そしてキャラの成長。
レイの「ポカポカする」という台詞もそうだが
第10使途との戦闘でレイがマリに
「逃げて、弐号機の人。ありがとう。」とさり気なく言うとこが良い。
そしてラストの熱血シンジ。これは皆が見たかった姿ではないだろうか。
「翼をください」が流れるあたりは、下手すると泣きそうだった。
旧シリーズ、TV版が終わった直後に庵野監督が
ラジオでエヴァファンアニメファンを全否定してるのを聞いたことがある。
「エヴァやアニメを見て喜んでいる奴ら、そこに逃げ込んでいる奴らに腹が立つ、
お前ら、現実を見ろ!」みたいなことを言っていた。
そして、旧劇場版 冒頭のシンジのオナニー、途中実写パートで映し出される観客。
ラストのアスカの台詞「キモチワルイ」。
旧シリーズは監督のオナニーだったということだろう。
「キモチワルイ」という台詞はそんな自慰行為をテレビや映画で公開している
監督自身、作品自体、そして何よりそれを見て喜んでいる観客に対して向けられたものだろう。
※(BSアニメ夜話での宮村優子の話によるとこの「キモチワルイ」という台詞は元々
「あんたなんかに殺されるのはまっぴらよ」だったとのこと、ただ、庵野監督が納得できずに
「宮村が部屋で寝てて、窓から知らない男が入ってきて、それに気付かずに、いつでも襲われるような
状況だったにも関わらず、襲われずに、宮村の寝てるところを見ながら男にオナニーされて
それをされたときに目が覚めたら何て言う?」と庵野監督が宮村優子に質問し、宮村優子の答えが
「キモチワルイ」で、その答えを聞いた庵野監督は「やっぱりそうか」と言って「キモチワルイ」
という台詞が採用されたらしい。)
また、ストーリーや演出面では旧シリーズの後半から劇場版にかけて
基本的には視聴者の期待には応えられていなかったように思う。いや、あえて裏切る展開だった。
転んだシンジが立ち上がろうとしても結局立ち上がれない、そんな展開が続いた印象がある。
旧劇場版でミサトが命を懸けてまでシンジを初号機まで送り届け、搭乗したにも
関わらず、シンジが結局何もできずに終わるところなんて
これから初号機はどんな活躍を見せてくれるのかと期待してたのに、フラストレーション溜まりまくりだった。
そう考えると、旧シリーズは全てを否定する終わり方をしており、希望も救いも無い。
この新劇場版「破」はそんな旧シリーズに対しての新たな答えであり
旧シリーズが傷になっている人に対しての救いになっている。
キャラの性格の変化と成長、トウジの妹の退院シーン等、意図的に
散りばめられている救い。
それを決定付けるのがレイが救われるシーンだろう。
第10使途が零号機を捕食した瞬間、旧シリーズ同様に
なんだやっぱレイは死ぬのかと思った。
しかし、「来い!」と言い放ったシンジの手をレイが掴み
レイが救われた瞬間、この新劇場版は旧シリーズとは違う、
希望の話なんだということを明確に感じ取れる。
そしてここでレイが救われると同時に、旧シリーズがトラウマになっていた
旧シリーズで心をザックリともっていかれていた人達も救われたんじゃないだろうか。
更に、このシーンこそ皆が期待していたエヴァだと感じた
シンジは自らの意思で初号機を暴走させ、使途を倒し、そしてレイはちゃんと救われる。
多分、これこそほとんどの人が見たかった展開だろうし
作り手の「これが、お前らが見たかったエヴァだろ、どうだ」という声が聞こえてくる気がする。
旧シリーズだったらシンジの意思とは関係なく初号機は暴走し、レイは助けられなかっただろう。
この最後のシーンには見たかった全てが詰まっている、だからこその感動であり
気持ちよさなんだろう。
ラジオで林原めぐみは、旧シリーズで2人目のレイが死んだ時点で
3人目は完全に別人として演じてるという趣旨のことを何度か言っていた。
また、リスナーからの「今まで見た映像でもっとも心打たれたものは何か」という質問の
返答として、この破のラストのシーンをあげ
「レイがシンジに手を握られた瞬間が、私にとって超至福だった。」と語っている。
もしかすると一番救われたのは、レイを演じている林原めぐみだったのかもしれない。
ただ、あと2作がこのまま気持ちよく最後までいってくれるのか正直不安だったりもする。
カヲルの「今度こそ君だけは幸せにしてみせるよ」という台詞。
そして海が赤いという設定。
これは旧シリーズと新劇場版の世界は繋がっていて、2順目の世界ということなのだろうか。
この破で唯一不満点をあげるならばエンディングが宇多田ヒカルだったこと。
別に宇多田ヒカルが嫌いなわけではないが、高橋洋子でいってほしかった。
そして新劇場版の趣旨には反するかもしれんが、できるなら曲は「残酷な天使のテーゼ」の方がよかった。
まあ、宇多田ヒカルによる「残酷な天使のテーゼ」でも許せる範囲。
ただ、それは高橋洋子に失礼すぎるな。